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真っ黄色に黄ばんだレトロキーボードを新品同様に戻すことはできるのか?


長文注意・画像多数
ちょっと前に一部で話題になった黄変したプラスチックの黄ばみ取り法を実際に手持ちのAXキーボードで試してみたのでご報告。
今回使った黄ばみの取り方(レトロブライト/Retr0Bright)の原理・詳細についてはネタ元のこちらのエントリーが詳しいです。

プラスチックの黄ばみを取る - なうなう
経年により日焼けで黄ばんだプラスチックを驚きの白さに
http://trashbox.homeip.net/nownow/20100905/

要するにまとめると、

  • 黄ばみを起こすのは概ねABS樹脂
  • 変色の原因は大きく分けて2つ、樹脂の劣化と添加物の化学変化
  • 今回の黄ばみ取り方に関連するのは後者に含まれる難燃剤の変質
  • これに対して、過酸化水素水と漂白活性化剤に漬け込み紫外線を当てることで化学反応を起こし、黄ばみの元(臭素)を別の分子に結合させて元通りに近い色に復元

という感じ。
で、以下はやってみましたよ、という話です。

まずは、素材と道具を用意。
肝心要の薬品は前例に従って花王のワイドハイターEXを購入。今回、対象がフルサイズキーボードと大きいので、ノーマルボトルと詰め替え用パックを1つづつ用意しました。
キーボードのガワはかなり大きいので、まずは大きめのビニール袋をホームセンターで購入して封入する作戦で行ってみます。

漂白前のキーボードはこんな感じ。

これは予備役のAXキーボードなのでかなり黄ばんでる上に汚れてますね。年代的には90年代初頭なので20年モノぐらいですか...。
京セラってパソコン作ってたの知ってました?

なぜか、フルキー最上段とファンクションキー列のみ変色度合いが違いますが、これは漂白済みだからとかではなく元々こういう状態で、キーの使用頻度と手脂による影響なのでしょうか? 他にも手持ちの同年代のAXキーボードがあるのですが、これが一番極端に黄ばんでいて、この段付き変色もこの個体だけなので、ひょっとしたら製造段階での何か違いがあったのかもしれないですね...。

まずは、とにかく分解してキートップを外していきます。

やみくもにドライバーなどを使ってキートップをこじって外すとどんどん傷ついてしまうので、こういう時のために保存しておいたキートップリムーバーを使うときだ! ...と思ったら、今でも普通に売ってるんですね、ちょっと驚きました。

アイネックス キーボードトップ引き抜き工具 TL-012

アイネックス キーボードトップ引き抜き工具 TL-012

リムーバーを使っても、結構地道な作業です、なにしろキーだけで104個(AXキーボードは104キー)ありますし、結構力がいるので、気づいたら歯をぎりぎりと食いしばって作業してました。
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大きいShiftやCtrl, Enterなどはワイヤーが付いているので、壊さないように先にワイヤーを外すのもポイント。

さて、キーは全て外れました。

またまたどうでもいいですが、iFixitMagnetic Project Matはこういう時にネジや部品をくっつけておけるので超便利、ホワイトボードマーカーで書き込みもできます。基本、書き込みできるマグネットシートですが、普通のマグネットシートとは逆に表面側に磁力があるのがポイント(裏側はくっつきません)。まぁ、市販品でも両面マグネットシートタイプが売られているのでそれでもいいのですが、概ね自己満足で。

直販は日本からでは買えないけど、輸入してるお店があります。
マグエックス マグネット両面カラーシート MSR-10WW 白/白

マグエックス マグネット両面カラーシート MSR-10WW 白/白

さて、外したキートップは表面が手垢や埃でかなり汚れているので、薬品に付ける前にまずは拭き掃除です。

中性洗剤と布やティッシュで一個一個地味に拭いていきます。キーの数だけやるから104個、マジ面倒...。ここはひたすらパターンを作って効率を上げながら繰り返すしか。
すべての作業 x 100と数回かかる、というのは肝に銘じておいた方がいいでしょう、軽い気持ちで夜中に始めるとえらいことに...。

さて、いきなりすべてのキーで試してみるのも怖いので、テンキーの端っこの「.」キーで試してみましょう。
ガラスの受け皿にワイドハイターEXを水で薄めた1/2溶液を入れてキーを浸けてラップで蓋をします。キートップが液に浮いてしまうのでは? と危惧していましたが、ABS樹脂は中に空気が入っていなければワイドハイターEX溶液には沈んでくれるようです。

朝の11:00にベランダへ...


紫外線量を増やすためにアルミホイルを敷いてみたりして。

2時間後、中の溶液が揮発して結露してますが、そのまま続行。

その晩21時頃。おお、なんかだいぶ色落ちた? でもまだまだ行けそうなので、実験続行。

そして、3日目の21時頃、


なんかいい感じっぽいので、
取り出して洗います。

おおお! 白い、白いぞ!

他のキーと比べてみます。

(さぁ、皆さんご一緒に!)なんということでしょう!

これは行けるね! という事で気を良くして、すべてのキーを投入します。
すべてのキーを浸けるのにビニール袋では不安ですし、沢山入れられるほど大きい食品トレーなどもなかったので、100円ショップでいい感じのサイズのトレーを買ってきました。

さー、じゃんじゃん浸けるよー、空気入らないように一個一個箸で裏返します。

漂白剤は手につくとかなり荒れますし、服につくとかなりカッコ悪いシミになるので、手袋・エプロンなどの準備は忘れずに。汚れてもいい格好で。
(色物のズボンやシャツなどに漂白剤の飛沫が飛ぶと、白ではなくオレンジとかピンクとか思わぬ変な色(元の繊維の色)の水玉模様ができたりするので、これに限らず漂白剤使うときは本当に気を付けよう)
そして、ラップ&アルミホイルでどや。(朝9:00)

そして、キーボード外殻も投入。ケース部は、ゴム足など異なる素材や濃色の部品はあらかじめできるだけ取り外しておきましょう。

厚手のビニール袋に封入。 液を入れるのがタイヘンだったのでなんか泡立ってるが気にしない! (これが後々トラブルの元に...)


翌朝、9時、順調に色が落ちてきてる、

三日目の9時、いい感じに白くなってきたけどムラがある、という感じ、

しかし、その日の晩...、汚染水漏れ発生。

外殻用のビニール袋が、気化と化学反応で発生した気体で膨れたのと溶解? により封が破れたのか、端からじりじりと液漏れ、ベランダが漂白剤匂でえらいことに。
流れ出た漂白剤がコンクリート面で軽く泡立ってえらいこっちゃ、という感じだったのですが、多量の水で洗い流した結果、痕が残るようなことはありませんでした。排水溝のカビがとれてすっきりとか...。
さらに、外側から別のビニール袋で2重構造にするなどの対策をとりました。

四日目の朝(9:00)、まだちょっとキートップの色に差があるので続行。

四日目の晩(22:00/屋内)、

まぁ完ぺきではないけど、これぐらいでいいんでないかい、という感じ。
というわけで、キートップは洗浄、乾燥工程へ。

洗浄後のキーがこちら。(ちょっとレンズが汚れてたみたいで、ピンボケすんません)
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どーですか、ムラがないわけではないですし、ちょっとWB飛んじゃってるので過剰に白く写ってますが、黄ばみは取れてるのはご理解いただけるか、と。

しかし、外殻は写真ではわかりにくいですがなんかムラになっていて、微妙な感じ、やっぱり液や光ののあたり具合にムラがあってビニール袋は微妙...。

パッと見はわかりにくいですが...、

良く見るとなんかヘンなまだら模様に...。
ビニール袋と密着していた部分がうまく化学反応できなかったようで、残念な事態です。

もー、これはダメだ、ということで、またホームセンターに出撃、今度はキーボードも浸けられるぐらいの収納ケースを購入(蓋つきで800円ぐらい)。

前回使用したプラスチックトレーが漂白剤でほとんど変質し無かったので、終わったらあとで使えるだろ、という目算。
これで行けるだろ、とベランダへ、

ところが、一日目で右上のインジケーター部の茶色が白く変色してきたので、あえなく中止。

とりあえずは、この段階で組み立てることにしました。


こんな状態、まだムラがありますね...。

それから、キーボード本体側には結構錆びが浮いていたので、こちらは錆びチェンジャーを投入して保護。酸にアルカリで錆の進行を遅らせます。

あと、今回のAXキーボードでは、AXキーが2色整形で、青いAXロゴが特徴ですが、こちらも青色部分が漂白されてしまってちょっと残念なことに...、これはもーしゃーない、ってことで激落ちくん(メラミンスポンジ)を投入して表面を軽く研磨します。要は表面が変質してるだけなので、激落ちくんレベルの弱いコンパウンドでもちょっと擦っただけでだいぶ青色が復活。

光が当たっていない内側を見るとこんなに青いんですけどね...、

まぁだいぶマシになったので良しとします。ただ、レトロキーボードだとこういうところはわりとしっかりですが、例えばキートップの刻印が簡単なプリントだったりすると剥げてしまうこともあると思うのでやりすぎ注意です。
また、気化・結露した液体のレンズ効果に晒されたのか、無変換キーの右下部分だけ斑状に白くなりカッコ悪かったので、こちらも激落ちくん投入。だいぶ良くなりました。

というわけで、右往左往した挙句、組み立てたのがこちら、


どうでしょう?

正直、新品同様までは行かず、古いのに程度のいいキーボードだねぇ、という程度ですし、目を近づけるとうすーく斑模様が見えたりしますが、元の状態から比べれば、もう大満足なレベルではあります。
その後、右上のインジケーターのラベル部分は剥がせることが分かったので、外殻は近いうちにもう一度露光してみようかと思っています。

まぁ、キーボードの場合、分解清掃まで含めるとだいぶ手間がかかりますし、上には書きませんでしたが、マンションのベランダでは日影がどんどん移動していくので、日光を最大限当てるためにちまちま移動させてみたり、汚染水が流れ出れば、水で洗い流し、と面倒なことも多かったのですが、ある程度流れができてくれば、漂白作業そのものはそんなに難しいことではありませんでした。
あと、恐れていた樹脂の劣化はABS樹脂の場合ほとんど感じられません。濃色の退色に気を付けること、ゴム足など粘着部品をきちんと取り外すこと、などに気を付ければそれほど劣化を恐れる必要は無さそうです。まぁ、さらにこれから10年たってからのお楽しみ、ではありますが。
並行して、お約束のWiiコントローラーのラバーカバーの漂白なども試してみたのですが、黄ばみの脱色そのものは成功したものの、多孔質と思われるかなり柔らかい樹脂なので、ワイドハイターEXの匂いが残っている感じなのと、表面の手触りが少々変わってしまったので、こちらはちょっと微妙かなー、という感じでした。

というわけで今回わかったレトロブライトのコツと反省点などのまとめ

  1. 黄ばんだプラスチック製品をワイドハイターEX溶液に浸し日光に当てることで黄ばみ取り
  2. 十分な大きさの透明な容器を用意すること
  3. 容器の蓋は市販のラップで十分っぽい
  4. ワイドハイターEXは結構臭いので、上面が平らなど、きちんと密閉できる容器が望ましい
  5. 直射日光が当たらないとなかなか化学変化が進まないので、できるだけ日に当たる露光場所を選びたい
  6. ビニール袋は厚手でもプラスチックの角などで簡単に破れるし、漂白剤で溶けるっぼいのでNG
  7. 今回は1/2〜4溶液でトライしたが、日光がしっかりあたっていれば十分のようだ
  8. 1日でも変化はするが、やはり2〜4日は余裕を見ておきたい、実験は晴天が2〜3日は続きそうな日を選ぶこと
  9. 見通しが良く丸一日直射日光が当たる場所なら半分程度の時間で済むと思われる
  10. 過剰に漂白されてしまった場合などは劇落ちくん(メラミンスポンジ)で修正
  11. 手荒れや服を守るために、服装は汚れてもいい格好で、できれば使い捨て手袋やエプロンなどを用意するのが好ましい
  12. 色関連のエントリーを書くときは面倒がらずにデジカメ使ってWBしっかり合わせた写真を撮っておくこと

漂白剤というわりと強めの薬品を使うので、慎重に準備と作業をする必要はありますが、期待通りうまく行ったときの効果は結構すごいので、興味がある方は一度挑戦してみるとよいのではないでしょうか?
ただし、下手をすると本当に怪我をしますし、黄ばみを取るつもりが劣化してしまうこともないとは言えないので、あくまでも自己責任で注意深く作業することをお忘れなく!
追記(2013/10/01):
その後、色々考えてみると外殻のまだら模様も実は過漂白の産物ではないか? という事に気づき(なぜなら元々ほとんど黄ばんでない内側より白かった)、結局外殻にも激落ちくんを投入し徹底的に磨いたところ、ほぼムラは解消しました。よーく見るとまだ見えますが、もう十分、という感じ。
綺麗になってすっきりしたので、自宅でメインに使ってるSONY Quarter-Lの同型キーボードと並べてツーショットを撮ってみました。(SONYの方はテプラ痕が生々しいですが、黄ばみとの比較や元の色がお察しいただけるのではないか、と思います)


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